研究概要 |
この研究は、高度に分化する専門医療とともに、Clientsの社会生活や、個々の死生観を考慮して行うプライマリ・ケア(PHC)の基本要件を、実社会を場に実習することが、卒前教育課程に必須のものと位置づけ、辺地の公的診療所を拠点に実地教育する方法を工夫改良した。 実習の到達目標は、診療、看護・介護医療、学校保健、地域保健、情報管理、他機関との連携など、地域社会を場とする保健医療サービスにおける医師の役割としての、1.Preventing,2.Gate keeping,3.Treating,4.Supporting,5.Coordinatingを行うための、医師が基本的に持つべき視野と方法を体験しながら理解を深めることにある。実習の進め方は、実地体験とそれに対する考察をグループワークを行い、他の者の考え方を吸収しながら、発想、視野、思考過程をシステム的に形成していくことにある。 この研究の中心とした地域での実習時期は、五年次の臨床実習期間内であるが、研究期間の後半には、早期体験実習として、一年次から6年次を通じて、それぞれ夏期休暇を利用して看護・介護実習(特別養護老人ホーム、老人保健施設、老人病院)、臨床スポーツ医学(高松市総合体育館における健康スポーツ総合診断)、地域保健医療実習(僻地健診を中心とする健康管理・健康教育)などへの自主参加プログラムを加え試行した。PHCの学習過程は段階的であり、その成果の評価は単に知識・技能的な能力に止まらず、医療目標の設定能力、状況判断、実際行動能力など多くの領域にまたがる。研究代表者らは実習過程の各段階で、数量化できない理解度を学習者と指導者が客観視しあいながら到達目標に導くために、「構造化機能関連図」と名付けた共通メディアを利用する工夫を試みた。
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