研究概要 |
脳虚血防御に働く生体の脳血管反応性の指標である脳循環予備能の加齢による低下は高齢者の虚血性脳血管障害発症の大きな要因と考えられる.我々は局所脳血流量と脳血管CO_2反応性の前頭葉優位と加齢によるその消失を明らかにして来た(第14回脳血管障害に関する国際Salzburg会議,1988年). 本研究は高齢者に多い脳深部穿通枝動脈系梗塞の発症機序解明のため三次元断層局所脳循環予備能の加齢による変化を明らかにすることを目的に若,中,高年ー健常者群において1)Tcー99m labeled RBC Singleーphoton Emission CT(SPECT)による断層局所脳血液量のCO_2反応性の定量的評価と2)Iー123 IMP SPECTによる断層表所脳血流量測定より断層局所[脳血流量/脳血液量]比の定量的評価により加齢により生ずる変化と脳内部位による脆弱性の差異を検討した.その結果1)In vivo RBC標識に関しては60ー70%の標識率を得たが局所脳血液量の定量的評価のためには90%の標識率が必要と考えられる.2)断層局所脳血流量の測定に関しては2cm大の関心領域におけるredistribution index,asymmetry index,fillingin indexの半定量的脳血流量indicesを中心とした評価で加齢による局所脳血流量の低下を認めた.3)5%CO_2吸入負荷による脳血管CO_2反応性の評価の関しては,10分間の5%CO_2吸入負荷によって生ずる動脈血中CO_2分圧の上昇は脳血管CO_2反応性の恒常的評価を可能にするものではなく,加齢による局所脳血管CO_2反応性の低下は現段階の結果からは明らかに出来ない.CO_2吸入中,脳血流量測定の所要時間である30分間動脈血中のCO_2濃度を恒常的に維持する困難さとCO_2吸入中の血圧値の上昇等全身循環動態に対する望ましくない影響を考慮した場合,今後の展開としてNaHCO_3の静注をCO_2吸入に代わる安定したCO_2負荷法とすることにより断層局所脳血管CO_2反応性の加齢による変化がより明らかにされる見通しである.
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