前年度の研究に引き続き、各種薬物の体内動態に及ぼす情動ストレスの影響に関する研究の一環として、今年度は、主に気管支拡張薬テオフィリンの血中濃度に及ぼす各種情動ストレスの影響について検討した。 実験にはWistar系雄性ラットを使用した。精動ストレスの負荷は、物理的および非物理的(心理的)情動ストレスの負荷可能なコミュニケ-ション箱装置法(30分間法)および金網による拘束法(30および60分間法)により行った。テオフィリン20mg/kgを動物に経口投与し、その直後より各種ストレスを負荷しその時の血中(血漿中)濃度薬物濃度を経時的にHPLC法にて測定した。なおコミュニケ-ション箱法によるストレスの負荷実験では、動物をコミュニケ-ション箱に入れフットショックを直接受ける動物(sender)とsenderの動物の情動反応の伝播によりストレスを受ける動物(responder)に分けて検討した。 コミュニケ-ション箱法での実験では、sender群においてテオフィリン投与30分で、その血中濃度は対照群のそれと比較して著明に低く、投与1および2時間後でも低値を示した。一方、responder群においては、対照群のそれと著明な差異はなかった。 金網による拘束法での実験では、拘束30および60分法とも拘束群の血中濃度は対照群のそれと比較して、投与30および60分後において有意に低値であった。またテオフィリン投与60分後では60分拘束群の方が、30分拘束群よりその血中濃度は著明に低い値であった。 以上のことより、テオフィリンの経口投与時の体内動態は、各種情動ストレスにより影響されることが示唆された。
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