平成2年度の研究において、申請者らは狭心症治療薬のニコランジルおよび硝酸イソソルビドの各種投与経路時の生体内動態する情動ストレスの影響をWistar系雄性ラットを用いて検討した結果、次のような結果を得た。1)ニコランジルを経口および皮下投与し、その後フットショックによる情動ストレスの負荷はその血中濃度の上昇を著明に減少させ、また静脈投与時でも低下させた。その時の組織内濃度は、心臓、腎臓および皮膚において低い値を示した。またストレス負荷動物では尿中からのニコランジルの排せつは亢進される傾向を示した。さらにニコランジル静脈投与時、その主要代謝物のNー(2ーhydroxyethyl)nicotinamideの動態について検討した結果、ストレス負荷動物において僅かの増加が認められた。2)硝酸イソソルビドの動態に対しては、経口および非経口投与時について検討してきたが、吸収過程ばかりでなく代謝過程にも影響していることが分った。 平成3年度の研究においては、気管支拡張薬テオフィリンの生体内動態について各種情動ストレスの影響を検討した結果、次のような結果を得た。1)コミュニケ-ション箱法でテオフィリン経口投与時のその血中濃度の上昇は、ストレスの負荷により抑制された。2)また金網による拘束法での実験では、拘束30および60分拘束群の血中濃度は対照群のそれに比較して、有意に低い値であった。 以上のことより、狭心症治療薬のニコランジルおよび硝酸イソソルビドの各種投与経路時の生体内動態、ならびに気管支拡張薬テオフィリン経口投与時の生体内動態は、各種情動ストレスにより影響されることが分かった。
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