研究概要 |
最近の研究から、脳内には従来の古典的神経伝達物質の他に数多くの神経性ペプチドの存在が明らかにされ,その生理的意義が注目されている.中でも,タキキニン・ペプチドはサブスタンスPの他に4種の新しい関連ペプチドが哺乳動物の神経系から発見され,さらに受容体もNKー1,NKー2およびNKー3型の3つのサブタイプが提唱されている.そこで本年度は,主に神経系と内分泌系の脳内での接点であり,循環器機能維持に大切な役割を果たしている視床下部や延髄に焦点を絞り研究を進めた. 1.中枢性血圧調節:タキキニン・ペプチドによる中枢性血圧調節には交感神経系を介するものと,下垂体からのバゾプレシン遊離によるものとの,2つの作用機構が存在するという非常に興味深い研究成果が得られた.特に,NKー3型の選択的アナログであるセンクタイドを脳室内に投与すると,血中のバゾプレシン量の増加とともに血圧が上昇した(Brain Res.,1990,Eur.J.Pharmacol.,1991).そこで次年度も,ひき続きこの点を検討する. 2.圧反射:圧受容器から孤束核への求心性神経の伝達物質としてサブスタンスPやニュ-ロキニンAが関与している可能性を明らかにした(Brain Res.,1989). 3.血管弛緩作用:主にブタの冠状動脈血管や大動脈を用いてタキキニン類による血管弛緩作用を調べた結果,タキキニン類は血管内皮細胞のNKー1型受容体に作用し,内皮細胞から弛緩因子(EDRF)を遊離させ,血管を弛緩させることが明らかになった(Neurosci.Lett.,1990).
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