研究概要 |
I.タキキニン・ペプチドによる血管平滑筋弛緩作用 平来2年度の成績から,タキキニン・ペプチドのNKー1型受容体が血管内皮に存在する可能性が示された.そこで本年度は, ^<125>IーBoltonーHunter substance Pをリガンドに用いて結合実験を行なった。その結果,ブタ大動脈の内皮細胞膜上には,Kd値が0.1nMの単一で高親和性のサブスタンスP結合部位が存在することが明らかになった.またサブスタンスP結合に対する各種タキキニン・ペプチドによる置換作用の強さは,サブスタンスP>フィサラミン=二量体サブスタンスP>ニュ-ロキニンA>ニュ-ロキニンBの順であり,NKー1型受容体のリガンドが強い結合親和性を示した.この成績は,先に調べた血管平滑筋弛緩反応の強さとほぼ同様であった. II.タキキニン・ペプチド受容体と中枢性血圧調節 平成2年度の研究に引き続き,主にタキキニン・ペプチドの中枢性血圧調節機構について検討した.本年度は特に,NKー3型受容体の選択的アゴニストであるセンクタイドによる中枢性血圧調節機構について検討した.センクタイドによる血圧上昇反応は,バソプレシン受容体拮抗薬の静脈内前投与により抑制され,しかもセンクタイドの脳室内投与により血中のバソプレシン量が著しく上昇した.また,視床下部の室傍核にセンクタイドを微量投与すると濃度依存的に昇圧反応を示した.以上の成績から,センクタイドによる昇圧作用の一部は,視床下部のNKー3型受容体を介したバソプレシンの遊離による可能性を示唆された.現在多くの新しい心血管ペプチドが視床下部領域に存在し,循環調節を行なっていることが確認されている.従って,今後さらにこれらのペプチドとタキキニン・ペプチドの関連性を検討することを大切であろう.
|