研究概要 |
近年、生体内に痛み、不安、血圧などのを制御・促進する薬物と同様の作用を示す生理活性ペプタイド及びそのレセプタ-が脳、脊髄などに存在していることが明らかにされてきた。現在までに、モルヒネ様物質としてEnkephalin,Endorphinなど23種のオピオイドペプチドが報告されてきた。 我々はヒト脳脊髄液中にモルヒネ様物質enkephalin、enkephalin分解酵素、およびその酵素活性を制御する因子の3者が存在していることを明らかにした。更に、疼痛などの疾患時にこれら3者どの様な動的バランスを維持しているか研究してきた。特に、我々は脳脊髄液中に存在する分子量1000以下の内因性酵素阻害物質が疾患時に重要な鍵を握っていることに着目した。 そこで、この様な内因性enkephalin分解酵素阻害物質が中枢系の脳、脊髄などに存在しているか、enkephalin分解酵素活性を指標として探索した。その結果,ウシ脊髄より2M酢酸で抽出し、7段階カラム操作で精製し、ヘモルフィンの前駆体、Spinorphinを単離することに成功した。本物質はオピエ-ト作用を有するヘモルフィンの前駆体で分子量876(LeuーValーValーTyrーProーTrpーThr)で水、有機溶媒に可溶なことより脳血液関門を通過すると思われる。本研究はSpinorphinを武器として、生体で起こる痛みなどの複雑な病態をアプロ-チすることにより、解明する突破口がひらけると考えた。 本年度、ヒト脊髄に存在するenkephalin分解酵素は脳などと異なる性状を示すことを明らかにした。更にSpinorphinがenkephalin分解酵素に対してそれぞれ特異的阻害スペクトルを有し、特にDPPに対してはKi値 5X10^<ー7>,非拮抗的に強い阻害活性を示した。
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