研究概要 |
大学生(平均年齢23.5才)を対象に自転車エルゴメ-タ-による運動(60%V^^・O_2 max.15分間)を行わせ、運動前後の採血検体を用いて各種ホルモン(GH.PRL.LH.FSH.TSH.ACTH.FT_3,FT_4,T_3,T_4,rT_3,TBG,カルチトニン,PTH,IRI,IRG,コルチゾ-ル,ソマトメジンC,HANP,レニン,アルドステロン)および70項目の血液生化学成分を測定し、運動による増加率を各項目毎、および項目間相互関係について、コンピュ-タ-解析を行い、ホルモンと生化学成分との相関関係を調べた。特に今年度は運動における甲状腺ホルモン値の変動と物質代謝の相関に焦点をあてた。既報(臨床スポ-ツ医学に:1409ー1415,1990)の如くTSHは平均112%(P<0.01),T_3は103%(P<0.05),T_4は102%(P<0.05),rT_3は103%(P<0.05),FT_3は102%(P<0.05),FT_4は103%(P<0.01),TBGは105%(P<0.001)の有意の増加を示した.注目すべき新事実は、T_4からT_3とrT_3への転換が同程度であったことである。つまり運動の際,筋肉内で5脱ヨ-ド酵素と5脱ヨ-ド酵素の活性化が同程度の強さであり,両経路の脱ヨ-ド化が同時進行しているという事実が明かになったことである。これは神経性食欲不振症など病的状態と大いに異なる現象である。今後、運動強度や持続時間の延長によってT_3とrT_3のProduction rateに差が生じるかどうか興味ある検索が残された。次に重要な発見は、物質代謝に及ぼすFT_3の重要性が明かになったことである。つまり運動による甲状腺ホルモンと生化学成分の変動の相関を検索したところ、23項目に正相関が1項目に負相関がみられた。これら24項目のうち21項目はFT_3と相関しており,FT_4とのそれはわずか1項目,残り2項目はTSHとの相関であった。次に間脳ー下垂体疾患患者にGnRHや,TRH負荷テストを行った結果と運動負荷テストを行わせた生理的内分泌機能検査を比較した結果、結果は100%一致した。これは今後,高価で時間のかかる薬剤負荷テストより運動負荷テストの有用性を示唆している。
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