研究概要 |
本研究は巨核芽球性株化細胞(CMK,CMKー11ー5,K562)及び巨核球性細胞の増殖を伴う病態について巨核球関連遺伝子(GPIIb,IIIa,Ib及びPF4など)の解析を行い,巨核球血小板系の分化・成熟の追跡及び巨核芽球性白血病とその周縁疾患の病態診断に新しい局面を拓く事を目的にしている。本年度の研究実績の概要は次のようである。1.巨核球株化細胞系における膜抗原及びサイトプラズミック蛋白であるPF4とそれらの遺伝子発現をフロ-サイトメトリ-法,電顕PPO(血小板ペルオキシダ-ゼ)法,サザン及びノ-ザンブロット法で検討した結果,巨核球系分化はGPIIIa,IIb,PPO,GPIb,PF4の順序で進展するものと考えられた。2.血小板特異蛋白遺伝子(特にGPIIb,PF4)のcDNAをbromodeoxyuridineで標識し,大腸菌プラスミドに組込み,標識プロ-ベを作成し,in situ hybridationによる遺伝子染色法を開発し,臨床材料から得た細胞について巨核球系細胞を同定を方法を案出し実用化した。3.血小板特異蛋白遺伝子(特にGPIIb,IIIa,PFー4)についてPCR(polymerase chain reaction)法による同定法を開拓しつつあり一部成功をみたので1992年の国内及び国際学会で発表する。4.巨核球系株化細胞のCa^<++>動員機構とトロンボキセン代謝を検討して巨核球には血小板とは異なったPG(プロスタグラヂン)に対する反応性がある事,又これらの伝達機構の検討で巨核球では受容体が未熟である事,更に巨核球系株化細胞を用いる事によって血小板受容体の合成過程の推移が検討できる事が明らかになった。5.臨床診断への応用としてPF4遺伝子の発現している巨核球性白血病は臨床的に緩慢な経過をとる可能性が示唆されたが,事実そのような症例があることを報告した。巨核球・血小板系の遺伝子解析は巨核球性白血病の診断のほか巨核球分化の分子レベルでの検索と応用にも有用である事が知られた。
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