研究概要 |
前年度はヒト赤血球からヘモグロビンA_0(Hb)を分離精製し,ウサギ抗体を作製し,これらを用いて,ラテックス凝集反応を確立した。この研究により,ヘモグロビンのペルオキシダ-ゼ様活性を用いた試験紙法にしばしば認められるアスコルビン酸による偽陽性,ミオグロビンによる偽陽性などが,本法では回避され特異的に尿中Hbの検出が可能となった。また種々の疾患では,ほぼ試験紙法と陽性率が一致したが,一部症例では異常病態をより高感度に捕えている可能性が示されたことから,ラテックス凝集反応に用いた同一の抗原,抗体を用いて,新たに放射免疫測定法を確立した。 システムは二抗体法(サンドイッチ法)であり,クロラミンT法で ^<125>Iを標識した抗原200ulに標準物質またはサンプルを50ul添加,更に抗血清200ulを加えて一晩反応させた後,抗ウサギIgGヤギ抗体200ulを反応遠心後,沈殿物中の放射活性を測定した。この結果,測定感度は約10ng/mlで,標準抗原を用いた同時再現性も良好で測定法自体の構築はなされたと考えられた。ところが,サンプル中のHb測定では,同時再現性,希釈直線性,精度共いずれも不良の結果であった。これはHbか採尿と同時にメトヘモグロビン化し比較的急速に抗原性を失なうためと考えられた。そこで,フェリシアン化カリウムによる安定化を試みたが安定性に改善が得られなかった。このように限られた条件であったが正常人と考えられる20名について測定を行ったところ,100ng/ml以上が3症例見出され,いずれもが異常病態であることが判明した。これらはいずれも試験紙法では検出できないものであり,Hbの安定性を克服した暁には,Hb微量測定法は,Hb異常症,腎機能異常症の診断,治療予後の判定に威力を発揮する可能性もあるように思われる。
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