研究概要 |
小腸アルカリ性ホスファタ-ゼ(ALP)を除く本酵素のC末端アミノ酸には、エタノ-ルアミンを含むグリカンホスホイノシト-ル(GPI)が結合している事が知られている。これに関し、ヒト胎盤ALPは細胞膜よりホスファチジルイノシト-ル特異的ホスホリパ-ゼC(PIPLC)によって遊離するが、ラット小腸ALPはこの処理で遊離してこないといわれる(Seetharam,B.et al.:Arch.Biochem,Biophys.,253:189ー198,1987)。このことは、これらのALPのGPIが異なる様式で結合していることを示唆する。 我々は、先づストレプトゾトシンで誘発した糖尿病ラットを用いた時、血清中に検された主たるALPは小腸型であった。In vitroの実験系で、十二指腸のALPはPIPLCにより遊離したが、回腸のALPは遊離せず、ラット血清ALPの特性は回腸ALPに似ていた。つまり血流中のALPは、回腸由来と考えられ、ラット小腸ALPは丁度IgG receptorの如く、ペプチド型とGPI型のanchor或いはヒトコリンエステラ-ゼの様に、回腸由来ALPはアシル化型GPIであるのかも知れない。 他方、ヒトは異なり兎腎は、小腸ALPを主成分とし、本酵素はラット十二指腸ALPの如く、PIPLC処理で遊離した。精製した小腸ALPの化学分析の結果、パルミチン酸、ステアリン酸、イノシト-ルをサブユニット当り各1分子持つことがわかった。興味深いことに、ラットをメチルニトロソウレアで誘発した癌組織中の小腸ALPには、ステアリン酸のみがサブユニット当り2分子に増加していた。又、癌組織中の小腸ALPは、PIPLC処理に対し耐性となっていた。この結果は、小腸ALP分子中のGPI部位の修飾によりPIPLCに対する感受性が変化するものと推定された。
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