研究概要 |
本邦の血友病患者がHIVー1に感染したと推察される時期から,7〜9年前後が経過したので,今後は,この患者群におけるAIDS多発が危惧され,より早期の予知,対応が望まれる。 この目的のため,我々は種々の予知マ-カ-の検討を長期にわたり実施してきたが,そのマ-カ-のうち,2,3にある程度の有用性を見いだすに至っている。 現在までに検討したマ-カ-は,thymidine kinase(TK),tumor necrosis factor(TNF),adenosine deaminase(ADA),β_2ーmicroglobulin(β_2M),neoptein(NP)およびTリンパ球サブセット,とりわれCD4,CD8リンパ球である。このうちTK,TNFは,特にHIVー1感染症の進行度との相関はなかったが,ADA,β_2M,NPは,HIVー1の病態とよく相関して変動することを確認した。 すなわち,ACのStageでは,CD4リンパ球数は年月を経るにつれ次第に減少するに対し,これら3つのマ-カ-はほとんど変化を示さなかった。 しかしARCからAIDSへと移行する時期には,これらマ-カ-は増加し始め,末期に至ると著増し,その後著減,死亡することが判明した。よって,これら3つのマ-カ-とCD4リンパ球の経時的測定は,AIDS発症予知マ-カ-として重要であり,これをさらに確認するために,症例を増やし,長期にわたり検討を重ねていきたい。 また,AIDSにみられる日和見感染症の原因の1つに好中球機能異常の存在を想定し,検索したところ,血友病患者の60名前後に,貧食能の異常を認めたが,HIVー1陽性者と陰性者との間に有意差はなかった(第5回日本エイズ医学会発表) 今後は,これらマ-カ-がAZTやレンチナンの治療によりいかなる変化を示すか,長期にわたり観察を続ける所存である。
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