研究概要 |
本邦のHIV-1感染者は,平成4年12月現在2千余名をかぞえ,このうち8割以上は,血友病患者が占めるが,感染したと推察される時期より7-8年経過しており,今後はこれら患者群からのAIDS多発が危惧される。 したがって,これら患者群からのAIDS発症を早期に予知し,速やかに対応することが今後重要となるが,その目的のため我々は種々の予知マーカーの臨床的有用性の検討を行なった。 検討対象としたマーカーは,tymidine kinase,tumor necrosis factor,neopterin(NP),adenosine deaminase(ADA),beta-2-microglobulin,soluble IL2 receptor(SIL2R),anticardiolipin antibody(aCL),CD4,CD8リンパ球などであり,次の様な結論を得た。 1)血友病患者では,HIV-1の感染の有無に関わらず,非特異的に免疫系が活性化されている。 2)その結果,今回検討した多くのcytokinesは,HIV-1感染の有無に関わらず血友病患者で増加した。 3)しかし,HIV-1陰性者,AC,ARC,AIDS別に分類し,比較するとHIV-1感染者,とりわけ病期が進んだ患者群で高値であった。 4)これらマーカーのうち特に有用と考えられたのは,ADA,NP,S-IL2,aCLであった。 5)これらマーカーを経時的に測定すると,HIV-1感染症の病期が進行し,悪化するにつれ,それと相相関して増加した。 6)特にNP,ADAは,末期に至り,死亡直前にはむしろ激減した。 7)以上より,HIV-1感染者の経過観察と,AIDS発症予知,並びに予後の把握には,これらマーカーとりわけNP,ADAの経過を追っての測定が有利である。
|