研究概要 |
今年度においては,まず私達の開発した脳内微小透析用プロ-ベの各モノアミンに対する回収率や流速の与える影響について基礎的な検討を加え,実用的に使用しうる段階であることをまず確認した。また測定システムについては,コンピュ-タ-によるデ-タ集積方式を採用し,各30分ごとに測定されるクロマトグラフを集積し,分析可能な方式を確立した.このようなシステムを用いて,本年度は予備的実験としてストレプトゾトシン(60mg/kg)投与による糖尿病ラットを作製し,尿糖とtail cutによる血糖値測定により糖尿病状態成立を確認後,6週目において視床下部腹内側部(VMH)に本プロ-ブを埋め込み、手術後4〜7日目に還流実験に供した。本プロ-ベ埋め込み後,過食状態にあること(暗期摂食量が対照群の225%にまで増加)と高血糖(607I15mg/dl)を確認し,還流実験を開始した。プロ-ベからのモノアミンの流出は2時間以後安定した状態となり、その後3回測定した値の平均値をもってその代表値とした。糖尿病状態においては,VMHからのNEの流出低下を認めたが,その代謝産物には明らかな変化はなく,代謝酵素が亢進している可能性も示唆された。一方,セロトニン系については,セロトニンもその代謝産物濃度も減少し,セロトニン代謝の低下が示唆された。また,VMHにおいては少ないと考えられていたド-パミンも本プロ-ベにて回収が可能となり、ド-パミン濃度の上昇とともにその代謝産物濃度の低下が観察され、ド-パミン系も抑制されている可能性が示唆された。以上のような結果が得られたことより,さらに糖尿病状態成立直後からの経時的な変化が摂食行動といかに相関してゆくかについて次年度から更に詳細に検討してゆく予定である。
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