研究概要 |
細胞内カルシウム([Ca^<2+>]i)動員機構を解明する上でミトコンドリアの関与に就いて検討を行った。実験材料としては,牛副腎皮質細胞を用い常法にてミトコンドリア分画を調製し, ^<45>CaでラベルしCa放出反応を検討し,同時にミトコンドリア内膜をジギトニン処置にて調製し,ADPーリボシル化反応を検討しCaチャンネル調節機構を明らかにした。一方,コレラ毒素は細胞膜上G蛋白の内,GsをADPーリボシル化することよりアデニル酸シクラ-ゼを活性化すると報告されているが,最近の研究ではGsが同時にCaチャンネルの機能調節を行っていることが明らかにされている。そこで,本研究では,コレラ毒素を用いて,in vitroの系でミトコンドリアに直接添加しCa^<2+>の放出反応を検討し,その容量依存性にCa遊離の促進反応を認めた。この事実は,コレラ毒素が直接的にミトコンドリア膜に作用しその透過性を変化させCa遊離を促すものと考えられた。また,ミトコンドリアでのADPーリボシル化反応がその膜の透過性特にCa放出反応に関与することが既に報告されており,コレラ毒素によるミトコンドリア内膜のADPーリボシル化反応を検討した所,ミトコンドリア内膜にコレラ毒素でADPーリボシル化される蛋白が存在し,抗Gs抗体とその蛋白が反応することより,Gsと思われる蛋白がミトコンドリア内膜に存在するものと考えられた。すなわち,本研究より,コレラ毒素は副腎皮質ミトコンドリア内膜上のGsをADPーリボシル化しCa^<2+>放出を促すものと考えられた。同時にGsを介さない反応としてコレラ毒素のBーサブユニットを用いた検討で,Ca^<2+>放出促進があり,ADPーリボシル化反応を介する系以外にも,膜透過性調節機構が存在し,Gsの機能を考える上で極めて示唆に富んだ結果が得られた。今後,ミトコンドリアからのCa動員機構を明らかにし,更にその生理的役割を明らかにし,病理病態の解明を行いたい。
|