研究概要 |
本研究は、ヒトにおけるGH分泌調節に関与する視床下部の役割を解明するため、疾患モデル動物として、GH分泌異常をきたしたラットにおいてGRFならびにSRIFの遺伝子発現とそれらに影響を与える困子を検討し、その相互作用を明らかにすることを目的とする。平成2年度は甲状腺機能低下症ラットにおける視床下部GRF遺伝子発現を検討し、その発現が亢進していることを見いだした。引き続いて、平成3年度では、視床下部SRIFがGRF分泌を抑制するという我々の報告(KatakamiらEndocrinology 1988)をさらに発展させ、GH/SRIF合成・分泌が障害された甲状腺機能低下症ラットや、下垂体摘除ラットを用いて視床下部GRF遺伝子発現に及ぼすSRIFの影響をNorthern blot anaysis、immunohistochemistryならびにin situ hybridization法にて検討した。下垂体GH分泌低下あるいは欠損をしめす甲状腺機能低下症ラットあるいは下垂体摘除ラットにおいては、Northen blot解析によると視床下部GRFの遺伝子公発現はcontrol ratに比較して、いづれも亢進していた。GRF immunohistochemistryならびにin situ hybridization法では、視床下部弓状核のGRF産生細胞の細胞数が増加(200%)し、GRF mRNAの産生が亢進(700ー800%)していた。これらのラットにGHあるいはSRIFを補充すると視床下部弓状核のGRF産生細胞の細胞数ならびにGRF mRNAの産生は抑制された。以上の成績から、蛋白質レベル(KatakamiらEndocrinology 1988)のみならず遺伝子レベルでも、視床下部弓状核GRF産生細胞に対して、SRIFが抑制的に作用することが明かとなった(Katakami et al,73rd annual Meeting of Endocrine Society,Abstract #1608,1991)。 現在、視床下部あるいは下垂体門脈血中のヒトならびにラットGRF/SRIF濃度の微量測定法を開発し(Hidaka et al,Clin Chem Enzymol Comm in press)、GRFとSRIFの生理学的な相互作用を検討中である。
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