研究概要 |
プロインスリン(PI)の分泌動態や末梢血中のPIとインスリン(I)の比率(PI/I)が膵β細胞の機能のよい指標になるとの仮説を立て、糖尿病や種々の程度の耐糖能低下を示す病態におけるPI分泌を測定した。その結果,これまでPI/Iが1)耐糖能の低下に伴い上昇する、2)肥満の有無では差がみられない、3)GTT境界型において、インスリン低反応者では正常反応者に比べ高値を示すことなどの諸点を明らかにした。本年度は主として以下の3点について検討した。 (1)プロインスリン分泌動態からみた加齢の影響:GTTで正常型を示す非肥満者56名を対象に、10歳代〜60歳代の各年齢層別で、空腹時のI,PI,PI/I,GTT時のΣI,ΣPI,ΣPI/ΣIを比較した。その結果,空腹時PI/I,ΣPI/ΣIともに加齢に伴い上昇傾向がみとめられた。 (2)糖尿病家族歴の有無によるプロインスリン分泌の比較:GTTで境界型を示す非肥満者159名を対象に,空腹時およびGTT時のPI/Iを測定し糖尿病家族歴の有無で比較した。その結果,家族歴の有無でこれらの指標に差異をみとめなかった。 (3)経口血糖降下剤(スルホニル尿素剤)投与前後のプロインスリン分泌動態の比較:SU剤による血糖コントロ-ル前後のGTT時のΣPI/ΣIを比較したところ、耐糖能の改善に伴い,ΣPI/ΣIの有意の低下をみとめた。 以上より,糖尿病発症の一因子とされている加齢に伴いプロインスリンの相対的増加がみられること,PI/I比に家族歴(遺伝)の影響はみられないこと,SU剤治療により耐糖能が改善すればプロインスリンの相対的増加も改善することなどが明らかとなった。
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