HDLの主要な構成蛋白アポAIは血中HDLレベルのみならず組織のコレステロ-ル貯臓を規制する役割を担う。アポAIの合成増大によるHDLの増加はコレステロ-ル逆転送系の増大と一致するという大前提のもとで、種々の条件下におけるアポAIのカイネテイクスをウサギ生体を用い検討した。【まとめ】0.5%コレステロ-ル負荷食によりHDLーアポAIの異化速度(FCR)は増大し、合成率も増加した。同時に、小腸でのアポAImRNAレベルの増加を認めた。LDLー受容体欠損症のWHHLウサギ(ホモ接合体)はHDLが欠損しているが、その機序として、HDLーアポAIのFCRの増大とアポAI合成率の低下が生体内代謝実験より明確になった。また、小腸のアポAImRNAレベルの低下も認めた。WHHLウサギの動脈硬化進展にLDLのみならずHDLーアポAIの合成低下もからんでいることを示し、LDL受容体欠損状態がアポAIのKineticsに影響を及ぼす可能性が示唆された。脂質低下剤プロブコ-ルはコレステロ-ル負荷条件下にてHDLーアポAIのFCRを増加し、その合成率を低下したことを明確にした。また、プロアポAIの合成率が低下していたことも証明した。我々は、ヒトプロアポAIを大腸菌を宿主として発現させ、精製した。ヒトプロアポAIはウサギ体内で、ヒト成熟型アポAIに1:1の転換をおこすことを発見し、合成ヒトプロアポAIをウサギに注入することによりHDL代謝をさらにくわしく観察できた。また、脂質転送蛋白(CETP)はリポ蛋白間のコレステロ-ルエステルの転送を行うが、これらのHDLアポAI代謝に及ぼす影響も同時に検討した。ウサギはこの脂質転送能が高いと報告されている。antiーウサギーCETP抗体をウサギ静脈内に注入した前後でのHDLーアポAI代謝回転実験を行ったが、アポAI代謝回転にはなんら影響は認めなかった。(抗ウサギCETP抗体はコロンビア大学Dr.Alan Tallより入手したものを用いた。)
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