1.動脈硬化症におけるアポリポ蛋白E同位体 急性心筋梗塞あるいは狭心症により当センタ-CCUに入院中の症例199例(CCU群)および人間ドックを受診した一般健常者211例(健常群)を対象とし、血清リポ蛋白・アポE同位体を分析した。虚血性心疾患の症例ではEー4症例の高頻度、E2症例の低頻度が認められ、これはCCU群の女性において最も顕著であった。また、男性でもリポ蛋白代謝異常の関与が強いとされる若年者において同様の傾向が認められた。しかし高齢の男性ではアポE同位体の分布は健常群と類似し、血清リポ蛋白異常以外の因子の関与が大きいものと思われる。以上のように、E4素因は動脈硬化を促進させ、E2素因は防御的に働いているものと考えられた。 2.変異アポE5とリポ蛋白代謝 アポE5について、リポ蛋白代謝に及ぼす影響、特にLDLレセプタ-に対する結合能を検討した。アポE5はLDLとよく競合し、E5は野生型E5よりも約2倍、LDLレセプタ-への親和性の高いことが示された。 レセプタ-への親和性を欠如するアポE2の症例ではカイロミクロンレムナントの肝臓への取り込みに障害があり、このため肝細胞では相対的にコレステロ-ルが不足し、LDLレセプタ-にアップ・レギュレ-ションがかかる。また、VLDLからLDLへの変換の効率も悪く、結果的に血漿LDL濃度の低下が導かれると考えられている。それゆえ、今回のE5に関する成積から、E2の場合とちょうど正反対の機構によって、血漿LDL濃度の上昇が来すことが予想される。実際、アポE5症例では高頻度に高LDL血症を伴っており、これが本症における動脈硬化症と関連しているものと考えられる。
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