研究概要 |
1.アポE同位体と動脈硬化:アポEにはE4,E3,E2の遺伝的な同位体が存在し、それぞれリポ蛋白代謝における作用の異なることが示唆されている。一般健常者でアポEの同位体別にリポ蛋白を検討すると、E2では有意にVLDLが上昇し、逆にLDLは低下していた。一方、E4ではDLDLの上昇傾向が示された。虚血性心疾患の症例ではE4症例の高頻度、E2症例の低頻度が認められ、E4素因は動脈硬化を促進させ、E2素因は防御的に働いているものと考えられた。 2.変異アポEとリポ蛋白代謝:アポE5・アポE7の変異アポEについて、リポ蛋白代謝に及ぼす影響、特にLDLレセプタ-に対する結合能を検討した。アポE5はLDLとよく競合し、E5は野生型E3よりも約2倍、LDLレセプタ-への親和性の高いことが示された。このため、アポE5症例では高コレステロ-ル血症が出現し、動脈硬化を発症しやすいものと考えられる。一方、アポE7ではアポE3に比べ、LDLレセプタ-結合活性が約1/4に低下していることが明らかにされた。 3.小児におけるアポE同位体とリポ蛋白代謝:血清を直接、等電点電気泳動にかけ、イムノブロッティング法を用いてアポE同位体の分析を行なう簡便法を開発した。この方法を用いて、小児におけるアポE同位体とリポ蛋白代謝を検討した。小児において、成人において観察されていたアポE同位体による血清リポ蛋白・アポ蛋白に及ぼす影響がすでに小児において出現してた。早期にアポE同位体を決定し、食餌指導を行うことにより、高脂血症の予防の可能性が示唆され、将来この方向へ進めることが望まれる。
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