研究概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)における急性転化の分子遺伝学的機序について検索をすゝめた。急転に伴うbcrーablmRNAの増幅が認められたが,bcrーabl遺伝子のgenomic amplificationはみられず、サザン法やRTーPCR法による検討ではbcr遺伝子の切断点やbcrーabl融合部位の変化も認めなかった。急転に伴うbcrーablmRNA増幅の機序と急転における意義について検索をすゝめたい。急転にtransforming活性を有する癌原遺伝子の活性化が関与するか否かについて、in vitro DNA transfection assayとPCR法を用いて検討した。急転13症例中2例に活性化transforming遺伝子が検出され,両例ともNーras遺伝子の活性化であった。その内の1例はPCR法にても検討し得、Nーras遺伝子コドン61番に点突然変異を認めた。PCRにて慢性期20症例中1例にNーras遺伝子コドン12番に点突然変異を認めたが、この症例は1年以内にaccelated phaseに移行した。これらの結果は、CML急転症例におけるras遺伝子の点突然変異の頻度は急性白血病と較べると低頻度であるが、一部の症例ではras遺伝子の活性化と急転との関連性を示唆した。更に,MーCSFに対する膜受容体をコ-ドするfms遺伝子のtransforming活性獲得に関与するコドン969番と301番の点突然変異の有無についてPCR法により検討したが、慢性期や急転期のいずれかにおいても点突然変異は検出されなかった。 大腸癌等において癌化とそのprogressionへの関与が推定されている癌抑制遺伝子p53の構造および発現異常について検討した。サザン法によるp53遺伝子のgrossな構造異常は慢性期症例ではみられなかったが、急転13症例中2例に認めた。また、急転症例ではp53遺伝子の発現異常が高頻度に認められた。これらの異常が急転への移行に関与するのか、あるいは結果にすぎないのかについて、遺伝子構造,p53蛋白レベルでの検討を施行している。
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