研究概要 |
慢性骨髄性白血病における急性転化の分子遺伝学的機序の解明とその制〓を目的として本研究をすゝめた。(1)RTーPCR法によるbcr/abl mRNAの結合部位の検索では、予後及び急転とbcr/abl結合部位との関連性は明らかではなかった。しかし現在迄の所、myeloid crisisの症例の解析が主であり、lymphoid crisisに伴うP190型transcriptの出現は確認し得ていない。(2)急転症例ではp53遺伝子mRNAが消失している症例が多いことがわかり、PCRーSSCP及びシ-クエンスにより転写調節領域を含めた構造異常の解析及び急転における意義の解明をすゝめている。(3)急転に伴うtransforming遺伝子のPCR及びDNA transfectionによる検討では、一部の症例でNーras遺伝子のpointーmutational activationが検出されたのみであり、又、fms遺伝子のmutation等も検出されなかった。(4)bcr/ablチロシンキナ-ゼの解析では新知見は得られていないが、bcr/abl遺伝子産物を特異的に抑制することがPh^1クロ-ンを抑制し、かつ、新しい治療法として有効である可能性について検討した。srcーtransformant細胞の形態を正常復帰させることが明らかにされているチロシンキナ-ゼ阻害剤herbimycinAは、急転細胞を含むPh^1陽性白血病細胞のin vitro増殖を有効に抑制することを見出し、現在投稿中である。又、サイトカインのPh^1陽性白血病細胞増殖への影響についての検討により、interleukinー4がcellular TPK減少を伴うPh^1陽性ALL細胞の増殖抑制効果を示すことを見出し発表した(Blood 78;1574,1991)。一方、CMLの治療として普及してきたインタ-フエロン(IFN)の作用機序についての検討では、IFNがbcr/abl発現を抑制する証拠は得られなかった。
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