慢性骨髄性白血病における急性転化の分子遺伝学研究-bcr/abl蛋白キナービ活性化transforming遺伝子の解析

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02671117
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 岡部 實裕 北海道大学, 医学部附属病院, 助手 (40113534)
• キーワード: 慢性骨髄性白血病 / 急性転化 / bcr / abl遺伝子 / bcr / abl tyrosine kinase / ras遺伝子

研究概要

CMLの急性転化(急転)の分子遺伝学的機序に関する集約と分析を行った。
CML55症例の解析では、(1)bcr遺伝子上の切断点と急転、(2)bcr/abl遺伝子の融合様式と急転との間には優位な相関はみられなかった。しかし、(3)急転に伴い白血病細胞のbcr/abl mRNAの発現の増幅とbcr/abl tyrosin kinaseの増強がみられた。(4)急転にtransforming活性を有する癌遺伝子が関与するか否かの検討では、N‐ras遺伝子の点突然変異による活性化が稀にみられるのみであった。今回の検討では、急転とbcr/abl以外の優性癌遺伝子との関連は否定的であった。一方、(5)癌抑制遺伝子p53の構造異常、発現異常が急転に伴い高頻度に認められた。以上の研究より、急転の一つの機序として、慢性期の腫瘍増殖の過程でp210^<bcr/abl>発現の強い造血幹細胞クローンが漸次選択的に増加することに対して、p53癌抑制遺伝子の機能喪失が促進的に作用する可能性が示唆された。
BCR/ABL癌蛋白と細胞内局在、tyrosine kinase活性の解析は、良質のmonoclonal抗体を得ることが出来なかったために十分な結果を出せなかった。現在迄のpreliminaryなdataではbcr/ablの局在と増殖に相関が示唆されているが、今後の課題と考えられる。bcr/abl tyrosine kinase活性とoncogenic actionの解析を種々の阻害剤などを用い解析し、それらの成果を欧米誌に論文や総説論文として発表した。

研究成果

• [文献書誌] Okabe Mihiro: "Review article:New aspects of oncoprotein‐targeted antitumor effect." Leukemia and Lymphoma. (1993)
• [文献書誌] Okabe Mihiro: "BCR/ABL oncoprotein‐targeted antitumor activity of antisense oligodeoxynucleotides complementary to bcr/abl mRNA and herbimycine A,an antagonist of protein tyrosine kinase." Leukemia and Lymphoma. (1993)
• [文献書誌] 黒沢 光俊: "アンチセンス法による自家骨髄のパージングの可能性" ディオ メディカ. (1993)
• [文献書誌] 岡部 實裕: "慢性骨髄性白血病における急性転化の分子遺伝学的研究" 北海道医学会誌. (1993)
• [文献書誌] Okabe Mihiro: "Effect of herbimycine A,an antagonist of tyrosine kinase,on bcr/abl oncoprotein‐associated cell proliferations." Blood. 80. 1330-1338 (1992)
• [文献書誌] Okabe Mihiro: "Review article:Inhibitory anti‐tumor effects of interleukin‐4 on Philadelphia chromosome‐positive acute lymphocytic leukemia and other hematopoietic malignancies." Luekemia and Lymphoma. 8. 57-63 (1992)