研究概要 |
顆粒球コロニ-刺激因子(GーCSF)は骨髓中の造血幹細胞に働いて増殖分化を誘導し、好中球の産生を促す糖蛋白である。一方、GーCSFは胎盤の絨毛上皮細胞で産生されていることが判明しており、胎児胎盤系におけるGーCSFの役割が示唆されている。我々はヒトGーCSFの誘導体を用いて胎盤におけるGーCSFの受容体の分析を行った。全身の臓器組織の中で造血臓器以外では胎盤にGーCSFの受容体が豊富に存在することが判明した。又、絨毛上皮腫にもGーCSFの受容体が存在することから、胎盤の組織の中でも絨毛上皮細胞にGーCSFの受容体が局在することが示唆された。又、胎盤におけるGーCSFの受容体をクロスリンキング法で分析したところ、2種類の受容体が存在することが判明した。造血細胞におけるGーCSFの受容体は分子量150,000の単量体の蛋白であることが判明しているが、胎盤には分子量150,000の受容体以外に分子量120,000の受容体が認められた。このことを確認するために大量のヒト胎盤よりGーCSF受容体の精製を行った。ヒト胎盤のホモジュネ-トより100,000gの膜画分を得てこれをTriton Xで可溶化し、イオン交換カラムを通した後にGーCSFを結合させたアフィニティ-カラムに吸着させ溶出させた。胎盤より分離精製したGーCSF受容体はやはりGーCSFに対する親和性が異なる2種類の分子量の違う受容体が分離された。その量比は4:1であった。胎盤に発現するGーCSFの受溶体のmRNAには2種類あり、その量比は5:1であることから、これらのmRNAに対応するものと考えられる。又、2つの受容体は解離定数600pMと210pMと異なる親和性をもつことが判明した。このことは、胎盤におけるGーCSFの作用が骨髓細胞に対する作用と異なることを示唆した。
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