研究概要 |
1.プラスミノゲン・アクチベ-タ・インヒビタ-2(PAIー2)産生前骨髄球性白血病細胞株PLー21のPLIー2産生およびウロキナ-ゼ(uーPA)産生悪性リンパ腫細胞株(RCーK8)のuーPA産生に及ぼすcyclicAMPの影響を検討した。細胞内cyclicAMPを増加せしめるprostaglandineE1,8ーbromocAMP,dibutyrilcAMPを培養液に添加して、PLー21細胞を培養すると、軽度にPAIー2産生が増強された。さらに、protein kinaseC活性化作用を示したPLー21細胞でのPAIー2産生の増強作用を有するphorbol myristate aceta(PMA)あるいはoleoyl acetyl glycerol(OAG)と同時にcAMPを培養液に添加すると、cAMPはPMAあるいはOAGと相乗的に作用して、PLー21細胞でのPAIー2産生を増強した。以上の研究成果は、日本臨床(特集血小板機能)およびBiochimica et Biophysica Acta誌に掲載される(1992年)。 一方、RCーK8細胞のuーPA産生に対して、cAMPは逆に抑制した。 以上、細胞内シグナル伝達系に関与するAキナ-ゼ、Cキナ-ゼの血液細胞由来腫瘍細胞株のPAIー2,uーPA産生に対する効果が明らかとなり、しかもAキナ-ゼは、PAIー2,uーPA産生に対しては逆に作用することが明らかとなった。これらの研究成果は、複雑で難解にみえるシグナル伝達系と蛋白リン酸化反応の血液細胞での線溶活性化因子およびその阻止因子の産生制御機構を解明するための重要な新知見である。最近我々は、PAIー2のcDNAクロ-ニングに成功し、現在、PAIー2およびuーPAのcDNAを用いてnorthern blot法により、mRNAレベルで研究が進められている。 2.PLー21細胞からのPAIー2精製法が確立された。 従来より、PLー21細胞よりNPー40cell lysis bufferにて細胞内画分を得て、PAIー2モノクロ-ナル抗体カラムを通して、PAIー2が精製されていたが、この方法では、核酸が混在することが明かとなり、cell lysis bufferに硫酸プロタミンを加えることで核酸の除去に成功した。この成果は、今後のより詳細なPAIー2構造解析の研究を可能とした。
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