研究概要 |
本研究開始以前に、我々は、ATLに合併する高カルシウム血症がいわゆる液性高カルシウム血症因子によって惹起されること、HTLVー1感染Tリンパ球細胞株MTー2がその因子を産生していること、この細胞株が固形癌の悪性高カルシウム血症因子とされる副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)と相同性のあるmRNAを発現していることなどを明らかにしていた。そこで我々は、cDNAクロ-ニングと塩基配列の解析から、MTー2がPTHrPそのものを発現していることを証明した。更に、解析した全例のATL患者の腫瘍細胞においてPTHrPが構成的に過剰発現している事を証明し、これがATLに高率に合併する高カルシウム血症の主因であることを示した。又、in vivoにおいてHTLVー1感染細胞の腫瘍化以前に、この遺伝子の発現が既に誘導されていること、この発現誘導がHTLVー1の転写活性化因子p40^<tax>によるものであることを報告してきた(T Watanabe et al.,J Exp Med,172;759ー765,1990,K Takatsuki et al.,Gann Monograph,in press)。この活性化に必要なPTHrP遺伝子プロモ-タ-領域の解析では、上流約600bpまでプロモ-タ-領域を削っても10倍以上の活性化が認められることを明らかにした。この領域には、p40^<tax>による活性化に関わる既知のエレメントが存在しないことから、これまで知られていない新たなエレメントが存在することが示唆された。この領域には、複数のZnフィンガ-蛋白結合コンセンサス配列(CGCCCCCGC)が存在することから、この配列が転写活性化に関わる可能性をCATアッセイ法を用いて検討したところ、明らかにp40^<tax>による活性化を増強することが示された(T Watanabe,J Jpn Soc RES31;33ー39,1991)。現在,この配列に結合し転写活性化に関わる因子の同定を試みているところである。これまでのところ、生体内の感染細胞あるいは細胞株において、immediate early genesに属する代表的Znフィンガ-転写因子であるEGRー1,EGRー2の発現は、PTHrPの発現と相関しないことが明らかになった(T Watanabe et al,manuscript in prepareation)。現在更に詳細な解析を進めている。
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