研究概要 |
人間での空間表現である認知地図に関する心理学での研究成果から次の点が明らかになった。空間情報として重要なものは,ランドマ-クのある地点とそこでの行動であり,ランドマ-クのある地点の相対的関係,包含関係といった情報は定性的なものである。 そこで,移動ロボットは,ランドマ-クのある交差点とその交差点で分行動(直進,右折,左折)を,環境内の徘徊により得るとして,それら情報に基づいてロボットが環境地図を生成するものとした。生成される環境地図は,目標までの経路沿いに存在するランドマ-ク系列,出発点から見た目標地点の相対的な方向,および目標地点に到達するための行動,で構成される。この構造は,ある目標地点へ到達するために必要な行動が、ランドマ-クから想起されることを可能としている。 このような環境地図を生成しかつ利用するために,移動ロボットに要求される移動様式について検討した。その結果,徘徊モ-ド,方向モ-ドおよび両者を組み合わせたモ-ドを考えた。さらに,部分的な情報のみの環境地図から,未体験の移動を可能とするための経路探索法も検討した。 以上の,環境地図の生成と利用の方策の評価を行うため,購入したワ-クステ-ション(LUNA DTー100)内に,実世界地図(名古屋市の一部地域)を作成し,シミュレ-ションを行った。環境内に同一ランドマ-クが複数ある場合や,曲線的な道路がある場合など,今後検討すべき問題点はあるが,徘徊により環境内の大部分についての情報が得られ,部分的な情報による経路探索にも成功することができた。これらの成果は,現在ロボット学会誌に論文として投稿中である。
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