研究概要 |
平成2年度および3年度の研究で得られた研究成界の概要をまとめると以下のようである. 1.非単調論理の特徴の比較 現在提案されている各種の非単調論理に対して,常識的知識の表現方法,推論方法を比較し,各論理の関係(知識の記述能力,推論能力)を理論的に明らかにした.その結果,Reiterのデフォルト論理が従来の一階述語論理との整合性が曽もよく,システム構成にも適していることが明らかとなった. 2.非単調論理における推論結果の妥当性の検討 Reiterのデフォルト論理において,どのような場合に推論結果の妥当性が損なわれるかを各種の例題について検討した.また,常識的知識の表現方法,推論方法,常識的知識の適用順序,推論結果(拡張世界)を得るまでの推論回数等の面から,推論結果の妥当性が損なわれる原因を検討した.その結果,Reiterのデフォルト論理では,確定的知識における推論(含意)結果と常識的知識における推論(デフォルト推論)結果とを区別していないことが,その最大の原因であることが明らかとなった. 3.新しい非単調論理の定式化と評価 2.の結果に基づいて,「妥当な推論結果」を与える新しい非単調論理の定式化を行なった.提案した新しい非単調論理は,デフォルト推論により導かれる知識集合にデフォルト推論の推論回数という尺度を導入することにより定式化したもので,「常識的な知識による推論を複数回行うとその推論結果は妥当性を欠く場合が多い」という我々が日常経験する状況をモデル化したものである. 4.推論システムの構築と実験 新しく定式化した非単調論理に基づく推論システム(小規模なエキスパ-トシステム)を構築し,このシステムを用いた質問・応答実験の結果から,推論結果の妥当性を検証した.なお,推論システムの構成にはPrologを用いており,一部制限付きながらこの推論システムは完全かつ健全である.
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