研究概要 |
本研究では学習と教示の関係をアルゴリズム論的に明らかにすることを目的とし,次の点について研究を行い成果を得た. 1.前年度に成功した教示と学習の理論を発展させる過程で,教示のためのkeyと呼ばれる概念に到達したが,このkeyを発見するための方式を開発することがこの研究を進めるうえで不可欠であることが判明した.そして手書き文字からのフォントの学習システムの設計のにはこのkeyを発見する手法を開発し取り込まねばならないことがわかった.そこで研究をこのkey発見のための方式の追求に集中した.その結果,正則パタ-ン上の決定木という概念に到達し,与えられたサンプルからそれを合理的に説明する正則パタ-ン上の決定木を学習するアルゴリズムを開発することができた.そしてサンプルから正則パタ-ン上の決定木を学習するシステムを試作した.この学習システム上での様々な実験を通して,この方式が他の分野においても極めて有効であることを確認した.この方式を従来の帰納推論の観点からの研究と比較した結果,これはアルゴリズムとして極めて効率のよいもので,その有用性はたいへん大きいものと期待される.計画していたフォント学習システムの試作は設備が不十分であったため行うことができなかったが,今回試作した学習システムとこの研究を通して得られた知見はこの様なシステムを構築するための基礎理論と技術を与えるものと確信する. 2.類推機構の計算量と並列化に関する研究を行った.その結果、有川・原口の類推機構の中にNP困難な状況が現れることを明らかにした.こうして類推による学習と教示では最も基本的な部分の計算量がとても大きくこの部分を合理的に解決することが今後の課題として残されていた.そのため新たに,この理論を単純化し,ミスマッチを許したelementary formalsystem(EFS)を使った類推機構の定式化を行なった. 3.前年度の研究では,概念クラスの小さな集合被覆を求める問題は教示可能性を深く関係していることを示し,そのため並列アルゴリズムの開発をおこなった.そこで平成3年度は,極小な集合被覆を求める近似アルゴリズムを核にして,与えられたサンプルをEFSとして合理的に説明する仮説を作り出す方式をつくり,それに基づいたシステムを試作し,上述の正則パタ-ン上の決定木を学習する方式との比較を行った.その結果,上述の学習システムのほうがより効率的であることが判明した.しかし,EFSに基づく方法はより大きな多様性をもっていることも明らかになった.
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