研究概要 |
人間の感性に基づく文字情報の認識・理解に関して,次の4つの観点から研究を進めた. 1.人間のもつ感性の一つと考えられる,柔軟な認識処理機構を模倣したニュ-ラルネットワ-クの動作と能力を明らかにするため,テクスチャ画像の識別を例に検討した。テクスチャの性質を表す統計量には,濃度共起行列と濃度差分特微を主に用いた.ニュ-ラルネットワ-クは3層の階層型ネットワ-クを対象とし,誤差逆伝搬法によって学習を行った。10種類のテクスチャに対する識別の結果,ほぼ完全な識別が可能で,かつ90度の回転にも対処できることが明らかになった. 2.ニュ-ラルネットワ-クによる手書き漢字と平仮名の区別の可能性について検討した.区別のための特微量には,Hough変換特微と局所方向寄与特徴を用いた.学習によって作成したニュ-ラルネットワ-クにより,学習に使用した文字種に対しては,未知デ-タセットでも94〜96%の正解率が得られることが明らかになった. 3.情景画像からの文字情報の分離抽出について,色相と明度に着目して分解した15種の画像に対して,系統的に処理を施し,抽出する手法を提案した.実験の結果,20枚の情景画像に含まれる104文字に対して68%の文字抽出率が得られた. 4.日本語言語に関する知識の体系化の一環として、日本の苗字デ-タベ-スを作成し,その分析を進めた.このデ-タベ-スの規模は,約71千個の苗字で構成され,約3.8千種の異なる文字が含まれている。
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