老化研究モデル動物としてカニクイザルの免疫学的老化の解析を行う目的で、老齢と青年ザルの免疫細胞と因子の比較検討を行った。 (1)免疫機能の低下時期; 補体溶血活性と血液型の抗A抗B抗価を年齢別に調査した結果、いずれも15歳以上で顕著に低下することが判明したので、以下の実験では20歳以上のカニクイザルを免疫学的老齢ザルとみなし、5ー7歳のサルと比較検討した。 (2)T細胞; FACS解析により、老齢ザルではCD4陽性T細胞サブレットレベルの若干の低下が見られた。ConAおよびPHAにより誘導される幼若反応は有意な低下を示した。この反応性の低下の機序を知るためConA刺激によるILー2産生能を測定した結果、条件により老齢ザルでの産生量に低値または高値が見られ、ConAに対する反応性の低下の原因としてILー2の産生量の低下のみでなく、ILー2に対する反応性の低下の要因も示唆された。 (3)B細胞; 抗ヒトモノクロ-ナル抗体23種を検討し、カニクイザルとよく反応し得る8種を得た。末梢血中のB細胞サブセットは老齢ザルと青年ザルで有意差は認められなかったが、老齢ザルに自己抗体である抗DNA抗体上昇がみら、抗体産生制御機能異常が示唆された。 (4)NK細胞;末梢血中のNK細胞サブセットレベルには両者で有意差はなく、NK活性の細胞障害試験でも有意な低下は認められなかった。 (5)マクロファ-ジ; マクロファ-ジ/単球サブセットレベルは老齢ザルで低下を示したが、その活性は貪食能試験で低下が認められなかった。 老齢カニクイザルにおける免疫担当細胞の基礎的解析を行った結果、TおよびBリンパ球での機能低下が著しく、この機序の解明が、老化に伴う免疫能低下の解明にとって重要であることが強く示唆された。
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