微量注入法により作製されたトランスジェニックマウスでは外来遺伝子が挿入された部位の宿主遺伝子を不活化するため、トランスジェニックマウスの5〜15%は劣性の突然変異を持つと言われている。本研究の目的は挿入突然変異動物を積極的に作出するとともに、変異遺伝子を効率的に回収する手段を検討することである。 1.現在までにプラスミドDNAおよびヒトパピロ-マウイルスDNAなどを導入したトランスジェニックスマウス約30匹を作製した。これらのトランスジェニックマウスのラインを確立するため、Founderマウスより仔マウスを作出している。今後同じラインのトランスジェニックマウス同士を交配することにより導入遺伝子をホモに持つ個体を作出する予定である。これまでに作製した導入遺伝子をホモに持つ個体に関してはなんら異常は認められていないが、カルモジュリン遺伝子を導入した1ラインでは導入遺伝子をホモに持つ個体を得ることが難しいため、個体発生を正常に遂行する上に重要な遺伝子の破壊が示唆された。現在その詳細について検討中である。 2.トランスジェニックマウス染色体上に挿入された外来遺伝子は通常高度にメチル化されている。したがって、プラスミドやλファ-ジDNAなど大腸菌中で発現する遺伝子はトランスフォ-メ-ションの宿主として用いられていた従来の大腸菌株では増殖が困難である。しかしHanahan博士らによりメチル化プラスミドDNAを回収可能な一連のMCR変異を持つ大腸菌株が開発された。我々は同博士よりこれらのMCR変異株の分与を受け、プラスミドDNAを導入したトランスジェニックマウスの染色体DNAより直接回収したところ、従来の宿主菌株よりも高率に回収されることがわかった。今後回収率の向上をはかり回収されたDNAの解析を行う予定である。
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