トランスジェニックマウスに導入されたDNAフラグメントがどのような機序でマウス染色体上に組み込まれるかについて、マウス受精卵前核へマイクロインジェクションされたDNAフラグメント間の相同組換えに注目し検討した。環状プラスミドpSy14(10.6kb)を互いにオーバーラップするように3つのフラグメントに切断した。2種類あるいは3種類のフラグメントをいっしょにマウス受精卵へマイクロインジェクションし、得られたトランスジェニックマウスのゲノムDNAを解析した結果、導入DNAフラグメントはオーバーラップ領域で相同組換えを起こし、もとのpSy14プラスミドを再構築したのちマウス染色体上に組み込まれたことがわかった。オーバーラップ領域の長さは400bp程度でも高率に相同組換えが起きた。つぎに、トランスジェニックスマウスの染色体上に組み込まれたプラスミドDNAが大腸菌中に回収することができるかどうか検討した。その結果Methylation-Dependent Restriction System(MDRS)に変異を多く有する大腸菌では効率的にプラスミドDNAを回収することができた。プラスミドの回収率は、ゲノムDNAを抽出したトランスジェニックマウスラインおよび由来臓器(脳、心、肺、肝、腎、脾、精巣、皮膚および尾)により異なっていた。これはプラスミドDNAが挿入された染色体上の位置や臓器により、メチル化の程度に差があるためであると考えられた。また、カルモジュリン遺伝子を導入したトランスジェニックマウスでは、導入遺伝子の発現とメチル化状態との間に相関が見られた。
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