ラットにおける新たな標識遺伝子を確立することを目的として、ラットゲノム中のミニサテライトDNAの多型性についてPCR法を用いて調べた。 ラットの遺伝子のうち、既に塩基配列の明らかとなっているものについて、デ-タベ-スよりミニサテライトDNAが存在しないかどうかを検索したところ、ILー3(Inter Lenkinー3)遺伝子およびSVSーIV(Seminal Vesicnl SecretionーIV)遺伝子のイントロン中にミニサテライトDNAが存在することが明らかとなった。この領域をはさむ形で、オリゴヌクレオチドを合成し、これらをプライ-として用いてDCR法を行ったところ、目的とするミニサテライトDNAを含む領域と思われるフラケメントが検出された。近交系ラットの各系統について、これらのフラグメントの長さを比較したところ、ILー3遺伝子において4種の、SVSーIV遺伝子において3種の長さのフラグメントが検出され、これらのミニサテライト領域が、近交系ラットの系統間で多型性を示すことが明らかとなった。 これらの多型性について、近交系ラットの系統間のもどし交配を用いて、他の毛色遺伝子座、生化学的標識遺伝子座およびRFLPの遺伝子座との連鎖を調べたところ、ILー3遺伝子の多型性は、いづれの遺伝子座とも有意な連鎖は認められなかったが、SVSーIV遺伝子の多型性は、生化学的標識遺伝子であるSVPー1遺伝子と強く連鎖していることが明らかとなった。 以上の結果より、DCR法を用いて検出されるミニサテライト領域の多型性は、ラットの新たな標識遺伝子として用いることができるものと考えられた。
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