研究概要 |
昨年度の研究により、ラットの系統間で多型性を示すことが明らかとなったILー3遺伝子およびSVSー4遺伝子について、系統間の戻し交配動物を用いて他の標識遺伝子座との連鎖を調べた。その結果、ILー3遺伝子の多型性による遺伝子座(ILー3)は成長ホルモン遺伝子の遺伝子座(Gh)とゆるく連鎖し、SVSー4遺伝子の遺伝子座(Svsー4)はSvpー1遺伝子座と完金に連鎖し、毛色遺伝子のa遺伝子座とも連鎖していることが明らかとなった。ILー3遺伝子座については、Gh遺伝子座がラットの第10染色体上に存在することが知られているため、さらに、第10染色体上の他の遺伝子座との連鎖を調べたところ、神経成長因子レセプタ-遺伝子(RatNGFRR)およびアンドロジェン結合タンパク遺伝子(RatABDG)の遺伝子座と連鎖していることが明らかとなった。したがって、ILー3遺伝子座はラットの第10染色体上に存在し、染色体上の遺伝子の順序はILー3ーRat^+ABPGーRatNGFRRーGhであることが判明した。また、これらの遺伝子座の順序はマウスの第11染色体上の順序と同一であり、ラットの第10染色体と、マウスの第11染色体は相同性が高いことが示された。 GenBank,EMBL等のDNAデ-タベ-スを検索し、ラットゲノム中の反復配列の存在を調べたところ、多数の多型性を示す可能性のある反復配列が存在することが明らかとなった。これらの反復配列のうちいくつかについて、反復配列をはさむ形でプライマ-を合成し、数系統のラットDNAについてPCR法に増幅し、多型性が存在するかどうかを調べた。その結果、いづれの配列においても、系統間異った長さの断片が検出され、これらの反復配列は多型的であることが明らかとなった。これらの反復配列の多型性は上記のILー3やSvsー4遺伝子座と同様に、ラットの標識遺伝子として有効に利用できるものと考えられる。
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