実験動物の遺伝的解析のための標識遺伝子には、高多型で系統間での変異が大きいこと、検出方法が容易でかつ迅速であること等の特徴が要求されている。本研究では、反復DNA配列に基づく多型性をPCR法により検出することにより、このような特徴をみたすいくつかの標識遺伝子を確立した。 ラットのILー3遺伝子には15塩基を単位とする反復配列が存在することが知られている。この反復配列をPCR法により増幅したところ、系統間で異なる長さの断片が検出された。この遺伝子座をIlー3遺伝子座と名付け、他の標識遺伝子座との連鎖を調べたところ、第10染色体上のGh、RatNGFRR、RatABPGと連鎖し、ラットの第10染色体上の遺伝子座の順序はGhーRatNGFRRーRatABPGーIlー3であることが明らかとなった。ラットのSVSーIV遺伝子にも20塩基を単位する反復配列が存在することが知られており、同様にPCR法により多型性が検出された。この遺伝子座をSvsー4遺伝子座と名付け、他の標識遺伝子座との連鎖を調べたところ、第IV連鎖群に属のSvpー1遺伝子座およびa遺伝子座と連鎖していることが明かとなった。 2塩基を単位とする反復配列について、DNAデ-タベ-スを検索したところ、多数の反復配列がラットの配列上に存在することが明かとなった。そこで、このうちのいくつかの配列について、PCR法用により調べたところ、いずれの配列も高多型な遺伝子座であることが明らかとなった。したがってマイクロサテライトDNAは、ラットにおいても連鎖解析のための有効な標識遺伝子として利用できることが結論づけられた。 本研究により、反復DNA配列はラットのゲノムの中に多数存在し、高多型な標識遺伝子としての連鎖解析に有効に利用できることが明かとなった。今後、これらの高多型な反復DNA配列を用いて、ラットの特定の染色体についての詳細な連鎖地図を作製していく予定である。
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