研究概要 |
紫外線照射するとエノキタケでは非常に多くのビタミンD_2(D_2)が生成されるので、D_2給源としてエノキタケを利用する目的で、紫外線の適切な照射条件、D_2の安定性、利用形態、嗜好性などについて検討した。 1.紫外線の照射時間は2時間で乾物1g当り約2000IU,20分では約1000IU、また生産者レベルでのモデルを用いて上方から照射した場合は30分で約500IUのD_2が生成された。家庭のレベルでは20〜30分の照射で十分であり、また生産者レベルで紫外線を照射しビタミンD_2強化エノキタケを作ることも可能と思われた。 2.生エノキタケは保存がきかないが、乾燥することで比較的長期の保存が可能であり、また乾燥粉末にすることで利用範囲が広がってくる。この際、乾燥によるD_2量の減少は殆どなく、また乾燥後冷室(5〜7℃)に保存した場合、数か月後も90%以上残存しており、紫外線照射により生成されるD_2は比較的安定であると思われた。 3.旨味物質のうち、ヌクレオチドは、イノシン酸(IMP)とグアニル酸(GMP)がそれぞれ約540,260mg%含まれていた。紫外線照射の有無による差は殆ど認められなかったが、乾燥すると旨味の強いGMPやIMPは数倍増加した。乾燥すると遊離のグルタミン酸も増加するので(平成2年度報告)IMPやGMPとグルタミン酸との相乗効果により、生より乾燥エノキタケの方が著しく旨味が増すと思われた。GMPをIMPに換算すると1138mg%となり、シイタケのIMPとして700mg%また、鰹節のIMP600mg%より遥かに多かった。エノキタケの旨味は口当たりがよく、旨味が後まで残るヌクレオチドを多く含みので嗜好の面では非常に好ましいと思われた。 4.紫外線照射エノキタケの乾燥粉末を各種調理に応用し、官能検査に供したところ、旨味やコクの増加が感知され、嗜好性の向上がみられた。
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