三次元拡散における寒天ゲル中の食塩の拡散係数が一次元の系における値に比べ小さく算出されること、および拡散過程終盤においては見かけの拡散係数として算出され、しかも見かけの拡散係数の減少することを昨年度の研究成果として報告した。そこで、本年度は三次元拡散におけるこれらの特徴が寒天ー食塩以外の場合においても同様に観察できるか否かを検討することを目的とした。 試料にはなるべく均一な固体で、調味液浸漬中の変化の見られないものが望ましいと考えた。そこで、ゲルとして成形でき、しかも、食品の成分を変えたときの影響を見ることも考慮して、炭水化物含量の高いコ-ンスタ-チゲル、馬鈴薯でんぷんゲル(共に炭水化物含量99%)およびタンパク質含量の高い卵アルブミンゲル(タンパク質含量93%)分離大豆タンパク質ゲル(同、90%)を選んだ。これらの試料は100〜25%のゲル濃度で成形できるものであったので、ゲル濃度を変えて拡散係数を算出することにより、ゲノ濃度の違いが拡散係数に及ぼす影響も検討した。 その結果、いずれの場合も三次元拡散の拡散係数は一次元の系における拡散係数の70%と小さな値であった。また、拡散過程終盤になると見かけの拡散係数の減少する特徴も同時に観察された。すなわち、昨年度に報告した三次元拡散における拡散係数の特徴が、寒天一食塩の系みならず、種々ゲルにおいても確認することができた。 一次元および三次元拡散の両拡散係数とも、ゲルの濃度が上昇するにともなって、その値は減少した。また、ゲルの種類および成分による拡散係数の相違は、ゲル濃度による相違よりも僅かであったことが認められた。これらの結果から、ゲル濃度と拡散係数の関係式を導くことにより、種々ゲル中における拡散係数の予測が可能となった。
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