本研究は、高等学校家庭科の男女共学の実施をひかえ、現代の高校生が男女とも興味をもって学ぶことができるような家族・保育領域の教育内容と指導方法を工夫することをねらいとして行ったものである。 まず第1年次は、高校生の家庭科への興味や生活関心を知るために男女高校生1400名を対象に意識調査を行った。その結果、これまでの家族・保育領域でとりあげられてきた内容には高校生はあまり関心をもっていないが、しかし、自分自身の人生に関すること、個性や性格、趣味、近い将来や進路などについて強い関心をもっていることが明らかとなった。また人間の誕生から死まで人生全体について考えることができる家庭科の内容については、乳幼児期を除き、全体的に高い関心をもっていることが分かった。とりわけ、結婚するかしないかなど、自分自身の意思決定に関する内容については強い興味をもっていた。 第2年次は、高校生の興味、関心に対応した教育内容とさまざまな学習方法をとりいれた家族・保育の指導案を作成し、実践の可能性とその効果を検討した。人間のライフステ-ジに沿って4つの題材、すなわち、[個性をみがく][異性とのつきあい][自立して生きる][共にいきる]を設定し、具体的な指導案を作成した。このうち[異性とのつきあい]について、指導案にもとづいて高等学校で実際に授業を行い、その効果を調査した。その結果、指導案に基づいた授業を受けた生徒は、今の自分を考えたり、自分の生き方や進路を考えるうえで「参考になった」とするひとが半数以上を占めた。また「人間の成長と発達と人々とのかかわり」について理解できたとする生徒も60%を越えていた。授業の方法としては他の人の意見を聞くことができて良かったとする人が特に多く、指導案は全体としては生徒の学習関心に対応して、よい効果を上げたことが確認された。
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