親から子への応答性だけでなく、夫婦間の応答性および子から親への応答性に注目し、その変容過程を明らかにすることが、本研究の目的である。 研究方法:本研究の対象は、妊娠初期から研究協力を得ている13組の父・母・子(第一子)であり、すべての対象児は、本年度中に満2歳になった子どもたちである。家庭訪問は、原則として対象児の誕生日の±2週間以内に行い、日常生活場面及び半統制場面での父・母・子三者の相互交渉を、約2時間に亘ってVTRに録画する。また、子育てや子どもへの感情や子どもの性格特性などについて、父母に面接調査を行う。さらに、家庭訪問終了後、実験室に来所してもらい実験的手続きにより、子どもが親に対して形成している愛着についてみる。 結果:父親の子どもへの応答性は、1歳までは子どもの月齢の上昇につれ、増す傾向が認められ、2歳時には減少する傾向が見られる。母親の子どもへの応答性には、子どもの月齢による顕著な変化は認められない。2歳時における父親の応答性の減少は、子どもに課題を課す半統制場面において顕著に見られる。愛着と応答性の関連をみると、2歳時に安定した愛着を親に形成している子どもの父親は、2歳時においても高い応答性を示す。一方、2歳時に不安定な愛着を形成している子どもの父親には、子どもへの応答行動はほとんど見られない。これは、子どもが働き掛けの対象として、父親と母親との明確に分化しており、子どもから父親への働き掛けが少ないことに起因する。また、不安定な愛着を形成している子どもの父親の課題への取組は、他の父親よりも明かに弱く、子育てへの関心の低さがうかがえる。
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