本研究の目的は、妊娠初期から継続的に協力を得ている父・母・子(第一子である3歳児)を対象として、日常的および実験的場面における3者の相互交渉を分析するとともに、子どもの社会的発達および子育てに関する意識との関連をみることにある。 日常生活場面・半統制場面における父・母・子の言語および非言語的相互交渉を「働き掛けに対する応答」「応答を期待する働き掛け」「応答を要しない行動」の上位カテゴリ-について分析した結果、これらの比率の違によって3者の相互交渉を類型化することの可能性が示唆された。特に、親からの働き掛けに対し応答的な関わりの比率が、他の相互交渉よりも高い子どもの場合は、子どもにとって目新しい環境や初めて出会う他児に対してかなり緊張を示すとともに、親に対して強い愛着を示し、その結果、移動空間が狭くなり、親の側近くに停滞する時間が長い傾向が認められた。 子育ての意識についてみると、父親の育児参加に対する評価は、父親の自己評価よりも母親の父親評価の方が高い得点を示す。これは本研究の協力者である父親は、一般的な父親よりも子育てに興味と関心があることに起因している。しつけについては、子どもが「良いこと」をした時よりも「悪いこと」をした時の、父親と母親の対処の仕方に多くの差異がみられる。また、子どもの発達を促進する要因に対する考え方にも明確な差異が見られ、父親は親の援助や激励の要因を母親よりも重視するのに対して、母親は子どもの素質的要因を重視する傾向がある。さらに、母親の生活の中における子どもの位置づけには、就労および趣味の有無によって顕著な差が見られ、母親が母親以外の生活を自己の生活の中に取り込んでいない場合は、子どもの存在そのものが、母親の生活の中で非常に重要なものになっている。
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