平成3年度までの継続研究によって得られた結果の一般性を検討するために、0〜6歳児をもつ約700組の父親と母親を対象として調査を行い、以下の結果を得る。 (1)有意な年齢差が見られた子ども観・社会的支援システムに関する項目が、母親と父親で重複する項目は約半数ある。年齢差と子ども観・社会的支援システムの関連における母親と父親の違いは、親としての自信および社会的支援システムへの要求に見られる。子育て観については、年長児をもつ母親と父親の方が、年少児の母親と父親よりも保守的であり、母親と父親の全体的な傾向には類似性が強く認められる。(2)子どもは、愛着対象となる人との体験を通して愛着対象を決定するため、親の子育て観よりも子ども観と多くの関連が見られる。また、自己を子どもの接触対象であると認識している母親と父親のいずれも、子どもに対して肯定的な感情をもっており、母親と父親の認識における類似性が指摘される。(3)母親の就業との関連をみると、通勤時間を含む就業時間との間には顕著な関連は見られない。むしろ、子育てにおける私的な支援システムとして父親・母親以外の家族をもっているか否かが重要な要件となっている。つまり、私的な支援システムをもつフルタイムの母親の方が、それらをもっていない内職の母親よりも子どもと肯定的な関係を結び易い可能性が示唆される。また、子育て観と就業形態には明確な一義的関係は見出だされないが、フルタイムの母親は母性を強調し、パートの母親は母性のネガティブな面を、内職の母親は役割分化を否定し、無就業の母親は母性がもつ問題性を指摘する傾向が認められる。(4)子育ての社会的支援に対しては母親も父親も経済的支援を望み、さらに、母親の場合は、時短勤務など母親が仕事と子育てを両立するための社会環境整備を望むものが多い。
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