本研究の目的は、13組の親子について継続研究を行ない、父・母・子の応答性について時系列的に検討するとともに、幼児をもつ約700組の父親と母親を対象として、継続研究の結果の一般性を検討することにある。結果は以下の通りである。 (1)父・母・子の相互交渉における父と子および母と子の相互交渉の頻度は、親の課題の受け止め方に依存している。父・母・子のいずれがリーダー的役割を果たすかは家庭により異なり、子どもの年齢による変化が顕著に見られる。(2)父・母・子の相互交渉における父と子および母と子の相互交渉の質的面に関しては、一貫した関係が見出だされず、父子関係と母子関係に質的な相違がないことが示唆される。(3)父親も母親も、働き掛ける意図が明確でない子どもの行動も働き掛け行動と見なして、子どもに応答する傾向が顕著に認められる。このことから、父親と母親が時間と空間と課題を子どもと共有することによって、父親と母親の応答性が高められる可能性が示唆される。(4)子どもが不安を解消し、精神的安定を得る対象であるところの愛着対象として父親と母親のいずれを選択していると父親と母親が認識しているかをみると、いずれも配偶者よりも自分の方を選択すると認識しているものが多い傾向がみられる。(5)子どもが自分を愛着対象に選択していると認識している父親と母親のいずれも、子どもと肯定的な関係を結んでいると認識しているものが多い。(6)父親と母親のいずれも、年長児よりも年少児に対して肯定的な感情を有意に多くもっている。(7)子育てに対する社会的支援に関しては、父親も母親も経済的支援を望むものが多い。さらに、母親の場合は、時短勤務など母親が仕事と子育てを両立できるような社会環境の整備を望むものが父親より多い。
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