研究概要 |
1.ミシン縫糸を定荷重の繰り返し引張条件下で特性評価する装置の製作を行った。縫糸にひずみを与える方法としては,往復スライダ・クランク機構を採用した。装置の縫糸につかみの一方は張力検出部に,他方のつかみはスライダ部に固定され,ミシンの場合と同様に高速度で不等速なひずみを試料に付与することができる。しかしそのままでは繰り返しに伴う残留ひずみのため縫糸の最大張力は漸次減少し,定荷重の繰り返し試験はできない。このため本研究では試験機のつかみの途中にトラップを設けてある。このトラップ部はパルスモ-タによって位置制御され,残留ひずみの一部を吸収して,定荷重の繰り返し荷重・緩和試験を可能にする。トラップの制御情報はパ-ソナルコンピュ-タからのパルス信号によって与えられ,この情報は縫糸の残留ひずみの発生傾向を考慮してプログラムしておく。縫糸張力をフィ-ドバックし,トラップの位置を制御しようとすると,高速試験に対応できないが,本研究の方法はいくらかの試行錯誤を必要とはするものの,高速試験が可能となる。現在装置は完成段階にあるが,まだ微調整を必要としている。 2.上記の試験機からの縫糸の張力および変位信号は,AD変換器を通してパ-ソナルコンピュ-タに入力し,デ-タを直接処理する。具体的には、縫糸の繰り返し引張緩和条件下におけるヤング率,残留ひずみ率,仕事量などの特性値を算出する。このプログラムは現在開発が完了している。今後,試料としては実用性の高い各種素材の縫糸を選択し,それらの試験結果と縫製における可縫性に関わる各種の現象したとえばシ-ムパッカリング他)との対応を明らかにしていく予定である。
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