1.I型の結晶型を持つ原料セルロ-スのラミ-とこれを20%のNaOH水溶液で処理し、完全にII型に転移した試料の結晶構造と分子鎖形態をX線広角散乱装置と固体高分解能^<13>CーNMR装置により調べた。その結果、 (1)今回、子午線方向を重点に調べた結果、I型は(040)ピ-ク強度が著しく強く、(020)、(030)ピ-クはほとんどハロ-の中に含まれている状態であるのにのに対し、II型の場合は三ピ-クともほとんど同程度の強度を示すことが認められた。このことは繊維軸の長さは両型とも同じとされているにもかかわらず、各グルコ-ス環の子午線方向のX線散乱能に変化をもたらすようなパッキングの変化のあることが認められた。 (2)NMRスペクトルもI、II型に差があり、各々固有の分子鎖形態を持つ事が認められた。 2.自由収縮下で所定のNaOH水溶液に24時間、I型のラミ-を浸漬し、一昼夜風乾して得た各アルカリセルロ-スのX線広角散乱パタ-ン、^<13>CーNMRスペクトル及び各炭素の化学シフト値を比較した。その結果、 (1)各々、A(〜12.5wt%)、B(15.0〜22.5wt%)、C(25〜45wt%)の三つのグル-プに分けられ、結晶構造と分子鎖形態の変化に強い相関性が認められた。 (2)100℃の水でA、B、Cグル-プの試料を水洗して得た再生セルロ-スの結晶構造は、Aグル-プはI型の、BとCグル-プはII型の結晶型を示した。再生セルロ-スの結晶型が異なる点に注目し、原料セルロ-ス及びA、Bグル-プの試料の各く炭素のスピンー格子緩和時間T^1を測定した結果、Aグル-プのT^1はI型よりも長く、分子鎖が動きにくい状態になっていることが認められ、これがI型からII型への転移機構に深く関係していることが予想された。 3.Na^+の選択的配位を検討した。出発原料がI型の場合Na^+はC_2の水酸基に選択的に配位することが示唆された。
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