研究概要 |
デジタル握力計から発揮された筋力値をRS-232C出力よりパソコンに取り込む方法を用いて要求値に対する追従能力発揮値の入力及び要求値と発揮値の差の積和算出プログラムを作成し、握力発揮調整能テストの作成(要求値及び発揮値の画面表示法・実施時間・試行回数の検討)並びにその妥当性、信頼性、客観性等を検討した。また、軽度神経障害者の筋力発揮調整能の検討及びトレーニングが筋調整能に及ぼす影響の検討を行った。以上の検討から新たに以下のような知見が得られた。1.表示法:数値、棒グラフ及び波形表示から後者の二者が有効(棒グラフが0.1Hz,波形が0.3Hz周期の正弦波形)。2.要求値の範囲と継続時間:握力最大値に対する5〜25%の範囲が有効であり、継続時間は30秒間程度の調整発揮でほぼ調整能が捉えられる。3.試行回数:3試行以内に測定値の変動がほぼ安定する(信頼性)。4.評価変量及び評価時間:要求値と筋力発揮値との距離を継続的に算出し、その総和によって筋力発揮調整能を捉えることが可能。また、前半の5秒間を除外した残りの時間で評価することが望ましい。5.健康人と神経機能に劣る軽度神経障害者の平均値間、及び健康人を対象としたアルコール摂取前後の平均値間に有意な差異が認められた。また、前者においては筋力発揮調整能テストスコアーの分布と筋力発揮調整能の異なる群の区別との関連性も高く、妥当性は比較的高い。6.筋力トレーニング前後の平均値間には有意な差異は認められなかった。7.異なる検者が同一被検者にテストを実施した際の測定値の一到度は比較的高い(客観性)。以上のことから、棒グラフ及び波形の両テストとも妥当性、信頼性、客観性が比較的高く、実用性の点においても優れることから、人の筋力発揮調整能を捉えるのに有効なテストと考えられた。
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