本年度は主として、成人男性69名と成人女性65名を対象として、老化の指標としての「活力年齢」を推定し、推定された活力年齢の因子構造とその性差について検討を試みた。なお、ここで言う活力年齢とは、“健康な人の或暦年齢での生物学的活力の水準、いわゆる生命力や坑痢病の程度と行動の基礎となる体力の水準の総合能力"を年齢を尺度として表したものである。 検査・測定は23項目に及ぶが、それらの中から、本研究の目的に合致すると考えられる項目を、ヒトの臓器・組織を代表する9項目の生理的検査値と5項目の体力測定の結果を、予測変数として選び出した。そして、これら14項目の相関行列を計算し、それに我々によって既に開発された主成分モデル(主成分分析によって得た第1主成分のスコアの分布を、Tスコアの考え方を用いて、全標本の暦年齢の分布に変換し、暦年齢と比較できる尺度に直したもの)を適用して「活力年齢」の推定式を求めた。 活力年齢の推定式、いわゆる第1主成分の分散中に占める生理的検査値9変数と体力測定値5変数の割合を基に、活力年齢を構成する生理的機能と行動体力の領域の相対的貢献度を求めたところ、男性の場合、27.8%と72.2%に、女性の場合、27.2%と72.8%になり、男女ともほぼ同じ値を示した。従って、活力年齢は行動体力の要因西大きく影響を受けると推察される。更に、生理的機能と行動体力の要因のなかみについて、同様手法を用いて相対的貢献度を求めると、生理的機能要因に対しては、男性では、努力性肺活量、収縮期血圧値、安静時脈拍の呼吸循環系機能が、女性では、収縮期血圧値と中性脂肪が、特に大きいことが、体力要因に対しては、男性では、PWCmax、垂直跳び、サイドステップが、女性では、サイドステップと垂直跳びの項目に貢献度が大きかった。
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