滋賀県草津市にある矢倉診療所及び県教育委員会の協力を得て、地域住民から男性69名、女性65名、健康運動を習慣的に行っている高齢者12名を対象に18項目の生理機能的検査(肺活量、心拍数、血圧、血液組成など)と5項目の体力検査(背筋力、垂直跳び、最大作業能力、体前屈、サイド・ステップ)を実施した。こうして得られた生理機能と体力検査項目に、主成分分析を適用して、第一主成分を年齢に換算したものを生物学的年齢、体力年齢、それらの総合的能力としての活力年齢の推定式を作成した。 その結果:1)体力年齢と生物学的年齢の間には統計学的に有為な正相関(男性:r=0.72、女性:r=0.70)が認められ、体力年齢が小さい(“若い")ほど、生物学的年齢も小さい(“若い")ことが明らかになった。2)これらの生物的年齢の推定式に有酸素運動を習慣的に行っている前述の高齢者12名の対象に生理機能的検査結果(肺活量、心拍数、血圧、血液組成など)を代入して生物学的年齢を算出し、比較検討を行った結果、同一暦年齢の人々よりも有意に生物学的年齢が低い(“若い")ことも判明した。3)女性の場合、血管系疾患の危険因子である血圧値と血中脂質が生物学的年齢を決定する重要な因子であることが示唆された。 さらに、中高年女性(106名、30〜72歳)を対象にして、老化の指標としての生物学的年齢を推定する上での主成分モデルの妥当性をさらに検討するために、運動負荷時の生理機能の検査値をも含めた老化度を評価した。この研究目的を遂行するために、近畿地区に在住する習慣的に運動を継続していない健康な成人女性群(健康群:86名、30〜72歳)、冠動脈硬化性心臓疾患(CHD)患者またはCHDの危険因子を4つ以上有する女性群(20名、43〜67歳)を対象に心肺持久力機能、体力測定、形態測定、体組成(体脂肪率)、血液組成など多項目の検査を行った。 その結果:4)安静時の血圧、血中脂質、体脂肪などの情報に加え、本実験では運動時の生理的機能や体力構成要素を説明変量に用い、主成分分析で算出した生物学的年齢を活力年齢として定義し検討した結果、健康群では暦年齢とほぼ完全に一致したが、冠動脈疾患の危険度の高い群では暦年齢54.6±9.9に対し活力年齢が61.4±7.2歳となり、両者間に有意差が認められた。
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