本年度行なった研究の結果を以下のようにまとめることができる。 1.永井道明の体操論と桜井恒次郎の体操論 (1)永井道明はスウェ-デン体操を学校体育の主要な教材にすべく尽力し、学校体操教授要目として制度的に確立させた。彼の主要な関心は、この要目の体操をいかに普及させるかという点にあった。したがって、彼体操論の中心は運動の種類や号令や体操器械の設置にあり、スウェ-デン体操の特徴であるべき解剖・生理学的理論は見られない。 (2)桜井恒次郎の体操論の特徴は、学校体操教授要目の展開期に教材を解剖学的に説明した点と、「身体臓器の三大本能」及び「人体の諸臓器は単独では働けない」という原理を提示し、体操によって身体諸臓器の機能が向上発達する根拠を示した点にある。 2.群馬県と鳥取県における体操実践 (1)群馬県における学校体操教授要目受容期の体操の実践については、次のようにまとめられる。 第1期(1913ー14)体操科教授導案を編成し、授業に直接役立つ実際的教材の実地演習を実施した時期。 第2期(1915ー16)教員の体操科講習を盛んに実施すると同時に、体操器械の設置を盛んに行なった時期。 第3期(1917ー18)1ー2期を通じて生じた格差を是正するための指導が行なわれた時期。 (2)鳥取県も群馬県と同様に、体操教程の出版と県内各地における体操講習、体操器械の設置を行った。 (3)この時期にはまだ解剖・生理学的な体操論に基づく学校体操の実践は行われていない。
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