近年、高齢者のスポ-ツ愛好家が増加する一方で、習慣的運動を継続してきた者に運動中の急死が起こることがある。そのため、運動中における急死の発生機序を解明することが強く望まれている。 そこで本研究では、その発生機序を検討するための基礎的資料を得ることを目的に、高齢者マラソンランナ-(14名)を対象として循環器系機能を中心とした体力測定、および血液生化学検査を実施した。 その結果、以下のような若干の知見が得られたので報告する。 1.被験者の平均年齢は、61.2±9.0歳であり、最高年齢は79歳、最低年齢は50歳であった。 2.彼らの主な運動目的は、健康の維持、体力増強、肥満解消などであった。運動はジョギングを中心としており、全員が市民マラソン大会の参加経験をもち、フルマラソンの出場経験者も含まれていた。今年度も7名がマラソン大会に出場した。 彼らの運動量を調査した結果、一回あたりの平均運動時間:2.1時間、一週間当りの平均運動回数:4.2回、一月あたりの平均運動回数:17.0回、一年間の平均運動回数:204.8回であった。 3.被験者の体格、生理的機能測定、および体力測定結果の各平均値を日本人の体力標準値と比較した結果、上体おこし、反復横跳びにおいて優れた結果が認められた。最大酸素摂取量を含むその他の項目は標準的な結果を示した。 4.血液生化学検査では、運動負荷の前後に採血した血液を分析した。その結果、血清脂質および血清酵素の各項目において変化が認められた。 現在、以上の知見について運動の影響を検討している。平成3年度は、被験者らが参加するマラソン大会、あるいは長距離走トレ-ニング前後の血液生化学検査値、および走行中の心電図記録などを計画中である。
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